- Vol.19 -

「空飛ぶだんご」

 東北新幹線を一関で下りて、駅前からバスで20分位のところに、国の名勝天然記念物に指定されている厳美渓(げいびけい)があります。
 栗駒山を源流とする磐井川の中流にあり、奇妙な形をした岩がおよそ2キロにわたり続いている美しい渓谷です。渓谷の両岸に切り立つ巨大な岩肌は、須川岳爆発で噴出した石英安山岩質凝灰岩が急流にえぐられできたものです。
 川床の岩には、割れ目やくぼみの中で砂や小石が激しい水の流れにより回転し、徐々に周囲や下方をえぐり取ってつぼのように穴のあいた甌穴(おうけつ)が無数にみられることから、この川の流れがいかに激しいものか容易に想像がつきます。
 特にこれからの梅雨の時期には、雨が続くことから川の水量も増え、より一層激しい川音が響き、より大きく深い甌穴が作られる事でしょう。

 さて、この厳美渓の名物は何といっても「空飛ぶだんご」です。今回もやはり食べ物ネタになってしまいました。このだんご、本当は「郭公だんご」と言いますが、観光客の歩くことのできる岩場から、渓谷の対岸の切り立った崖の上にあるだんご屋さんとの間にワイヤーが張ってあり、そこをだんごや代金の入ったザルが行ったり来たりする様が、あたかも空を飛んでいるように見えるためこう呼ばれています。

 まず、だんごが食べたーいと思ったら、あずま家近くの看板のあるところに(ここは観光に来た人が必ずいますのですぐにわかります)行って代金をザルに入れます。次に、ワイヤーから木の板が吊るしてあるので、備え付けの木槌でその板を"カンカーン"と叩くとこれが合図です。ザルが一気に谷を渡り崖の上まで走り出します。少し待っていると、再びザルがスルスルとすべるように降りてくると中におだんごが入っていると言うわけです。これが、とても子供に好評で、"カンカーン"と木を叩いて合図をしたいがために、せがまれてもう一皿注文してしまう方もおられます。
 ザルの中にはおだんごとお茶が入っています。重力をうまく利用しながら、あの素早さでザルを上げ下げする店員さんのザルを引っ張るロープさばきは見事なものだと見ているだけで感心してしまいます。ここでのおすすめは、健康にも良い胡麻を使った胡麻だんごです。ほどよい甘さで思わずおかわりしたくなります。

 僕らのような仕事をしていると、これがインターネットショップと良く似ている方式だなと思います。
立て看板が商品を見ていただくページ、崖に張られたワイヤーが電話線と宅配トラック、"カンカーン"と響く音が「注文しましたよ」のメール、崖の上でロープを操作する店員さんが僕らと運送会社の配達員さんに置きかえられるような気がしました。
 もっとも、空飛ぶだんごは、代金先払い方式でキャンセルなし、注文を間違えても変更する方法はありません。大声で叫んでも、店員さんに聞こえる距離ではありませんし、崖の向こう側まで回って行くのはとても大変なことですから。でも、おだんごが「すぐ手元に届き」味わうことができること。離れていながらも一生懸命ロープを操作する「店員さんの姿が見える」こと。子供が喜んで木の板を叩きたがる「おもしろさ」など、今後このインターネットショップを運営して行く上での大切なことが発見できたような気がします。

 厳美渓のある一関市には、平泉の中尊寺や船下りができる猊鼻渓などの観光名所や、のんびりできる厳美渓温泉を含む一関温泉郷などもあり、歴史と自然を楽しむには良いところだと思います。
仙台藩主・伊達政宗公が、「松島と厳美がわが領地の二大景勝地」と自慢したと言われるところでもあります。ぜひ一度カメラを持ってお出かけになってみてはいかがでしょうか。「空飛ぶだんご」とても気持ちがなごみますよ。

 
   
 
 
   
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