- Vol.68 -

「五月晴れとフィルム」

 皆さんは「五月晴れ」という言葉からどんなことを想像しますか?
 5月の晴れたとてもさわやかな日? それとも別の様でしょうか?
 広辞苑で調べて見ると2つの意味があるのですね。
 もともとは旧暦の皐月(6月)の梅雨の時期に晴れ上がった日のことを指したようですが、最近では5月の晴れの日を指すこともあるようです。

 さて、皆さんは写真を撮影するときの色温度の違いによる色の違いをご存知ですよね。フィルムカメラでもデジタルカメラでも基本的には太陽光を利用して写真を撮るのが前提になっていますので、太陽の色温度と写真フィルムやデジタルカメラのホワイトバランスの関係って、切っても切れないつながりがあるのです。

 普段、ネガカラーフィルムをお使いの皆様には、あまりピンと来ないかも知れませんが、カラースライドを常用する皆さんの間では、色温度を補正するのが当たり前のことになっています。
 もし、お手元にカラーフィルムのパッケージがあったら見ていただきたいのですが、パッケージの裏側あたりに「デーライトタイプ」と記載されているかと思います。
 では、「デーライトタイプ」とはいったいどんな事でしょう。英語表記をすると"Day light type"になります。漢字で書くと「昼光用」、「昼間の光で撮影するようにできています」という意味ですね。

 それではカラーフィルムの「デーライトタイプ」の色温度設定はどうなっているのでしょう。ほとんどのフィルムメーカーが色温度5500K(ケルビン・色温度をあらわす単位)の光源で撮影したときに、正常な色に記録されるようにフィルムの乳剤を調合しているのです。

 太陽光の色温度は6280Kですが、地表に届くまでに大気の関係で正午の色温度が5000〜6000Kになってしまうのです。このため、間をとって5500Kに設定しているようです。

 それでは、正午の色温度が5000〜6000Kと開きがあるのはなぜでしょう。もう、おわかりですね。
 それは冬至と夏至の太陽高度の違いにより、地表に当たる太陽光の入射角の違いによるものです。
 日本は、北半球に位置しますから、冬至のときの太陽高度が最も低く、入射角が深くなります。反対に夏至の時は太陽高度が最も高く、入射角が浅くなりますね。
 入射角が浅くなる夏至の時は色温度が上がり、深くなる冬至のときは下がることになるのです。
ならば、太陽が赤道上にある春分・秋分のときが5500Kの色温度だろうと考えがちですが、大気表面の反射の関係などで、春分と夏至のちょうど中間あたりの今ごろがこの色温度にあたるそうです。

 実際に外の景色を眺めて見てください。大気中の水蒸気が少いこともあり、どことなく全ての色が生き生きと見えて来ませんか?
 デザインで用いるカラーチャートやカラーチップなどを、屋外に持ち出して見ると、正午と夕方では大きな色の違いに驚きますが、同じ時間でも時期が違うと色の違いがはっきりとわかります。

 ちなみに、写真撮影で用いるフラッシュも5400〜5500Kの光を発光しているのです。このため、色温度を特に気にすることなく普通に撮影ができるのですね。

 以上が、カラーフィルムの色温度についての解説ですが、冒頭に記したように、色温度を気にしながら撮影することが必要なのは、主にカラースライドを用いる方たちです。
 ネガカラーを用いるほとんどの方は、そんなことを気にせずにご利用いただいて構いません。それは、ネガカラーはプリントするときにDPE店でカラー補正を行ってしまうからです。
 裏を返せば、どんなに色温度にこだわって撮影しても、技術がいまいちなお店にプリントを依頼すると、正常な色で出来上がらないこともあります。それはプリント技術だけでなく、プリントする機械や現像する薬品の状態や温度まで、密接にかかわって来るものなのです。

 風薫る5月、ゴールデンウィークは終わってしまいましたが、5月もあと半分残っています。本来の意味である「梅雨の晴れ間」ではなく、気持ちよい陽光の下で、本当の色探しをしてみてはいかがでしょうか?

 
   
 
 
   
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