- Vol.37 -

「 梨のお話し 」

 午前6時過ぎ、このところ我が家の奥方は朝食の準備をする前に、梨の皮むきから一日がスターとします。
 夏の終わり頃から、平日はほとんど毎日梨が食卓を飾ります。寝ぼけ眼の子供たちもふらふらとテーブルにつき、おもむろにきれいに皮がむかれた梨をほうばります。サクサクとした食感とほのかに甘い香りが口中に広がり、乾いたのどを潤して爽やかな気分にさせてくれます。

松戸市五香六実の香実園にて
ニコン・クールピックス800で撮影

 梨は、古来漢方では薬効のある果物とされており、利尿作用や解熱作用、喉の渇きや痛みを癒す作用があると言われています。高血圧症の方には体からナトリウムを排出するカリウムが含まれていますし、消化促進効果もあるので、朝食べる果物としては最適ですね。

 梨と一口に言っても、お店に行くと何種類もの梨が並んでおり、茶色や黄緑などの色をした物や大きさも様々で、「これ全部梨なの?。」と疑問を抱いてしまいそうです。
 まず、黄緑系(青梨)の品種には、代表選手「二十世紀」や「菊水」、「八雲」。茶色系(赤梨)の代表は「豊水」や「幸水」。最近では少なくなった「長十郎」などがあります。他にも、「新高」、「新雪」、超特大重量1.5キロ、値段も1玉2000円以上もする「愛宕」や、水分が多く淡白な味の「晩三吉」などとても多くの品種があるのですね。

 ここで、梨の歴史について少しだけ・・・。
 青梨代表の「二十世紀」は、千葉県松戸市の松戸覚之助という人が、明治21年(1888年)親戚の庭で見つけた偶発実生の品種で、明治37年(1904年)に二十世紀時代を担う品種になるだろうと「二十世紀」と命名されました。このとき10本の苗木が今は梨の産地として全国的に有名な鳥取県にわたりました。梨は砂地で水はけの良い土地を好み生育します。まさにうってつけだったわけです。でも、雨に弱く病気になりやすい品種だったため、鳥取の農家の人たちは十年もの歳月をかけて栽培技術を磨いたそうです。

 また、赤梨代表「長十郎」は、神奈川県川崎市の当麻辰次郎と言う人が、明治28年頃(1895年頃)発見した偶発実生の品種で、彼の家の屋号が長十郎だったため「長十郎」という名前になったようです。こちらは、病気に強く栽培しやすいこともあり、当時赤梨といえば「長十郎」と大変多く出回っていたようですが、その後、甘味がより多くおいしい梨を目指して品種改良が行われ、昭和34年ころ「菊水」と「君塚早生」の交配種「新水」、「菊水」と「早生幸造」の交配種「幸水」、「りの14」と「八雲」の交配種「豊水」という梨の御三家(梨三水)が誕生しました。

 新しく、幸せで、豊かな、みずみずしい梨と言う意味でこの名前が与えられたそうですが、「幸水」、「豊水」は全国に名を馳せ、とても有名なおいしい梨の代表になってしまいました。もともと、これらの品種は「日本なし」の仲間で、「ニホンヤマナシ」という野生種を基本に改良されたものだと言われています。梨は、“なし”という名前が“無し”につながるのを嫌って、“ありのみ(有りの実)”とも呼ばれます。

 さて、新鮮な梨を新鮮なまま味わうには、まず鮮度の良い梨を選ぶこと。色が濃く大ぶりで実が硬いもの。二十世紀などは実に袋をかけることが多いので、袋を取ってから日光に十分当たった黄色味が強い物がおすすめです。また、実が木についていた部分に緑が残っている方が新鮮な証拠です。保管は冷蔵庫で密封できるビニール袋で1週間が目安です。

 でも、鮮度においては果樹園での「梨狩り」にかなうものはありません。お近くに梨狩りができるところありませんか?。時期的に「二十世紀」は終わりごろ、これからは関西方面は岡山あたりの「愛宕」や「晩三吉」、関東近郊では、高地にあたる長野、群馬あたりの「二十世紀」や「豊水」が狙い目です。少し涼しくなりかけた中秋の梨、甘味がのってとてもジューシー。まさに今世紀とともに歩んだ味を味わってみてはいかがでしょうか。

 
   
 
 
   
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